3月に上演予定だった『トリプル・ビル』がコロナのせいで中止になってから
実に半年余り。
この『海賊』は祥子さんの退団公演(後日遅沢さんの退団公演ということにも
なってしまいました)もあり、中止にこそならなかったものの、延期、再延期、
そしてキャスト変更(矢内さんがご病気により降板)と二転三転し、ようやく、
本当にようやく上演を迎えました。ダンサーたちにとって、この7か月が
どれほど不安な日々だっただろうと思うと映像での鑑賞とはいえ感無量です。
この回は石橋さんランケデム&西口ビルバントという魅力的な悪役の再演
(2017年に2人とも同じ役で出演)が観たくてチケットを購入しました。

ライブ配信でバレエを観るのは初めてです。ちょうど今朝書籍版の『海賊』が
届いたので、それを読みつつ、ちょっと心配もありつつ、PC前でスタンバイ。
開幕前にTBSアナウンサーが簡単にあらすじを紹介してくれたので、ストーリーが
わかりやすかったと思います。

冒頭は堀内コンラッド、山本アリ、西口ランケデムに、杉野さん、栗山さん。
イケメン揃いで頬がゆるんでしまう・・・(おばさんだわ  ^^;)
特に山本さんのアリ。2017年で初めてアリを踊られた時は、熊川アリや
伊坂アリと比べてあまりにも若く、幼い印象だったのを覚えているので、
ぐっと男らしい感じになった姿がよかったです。
堀内さんのコンラッドもお初。堀内さんはアリもできそうですけど、
包容力や温かさを感じさせる持ち味なので、やはりコンラッドのほうが合うかな。
ビルバントの西口さんも長身でかっこいい。この時点ではまだコンラッドの
最も忠実な部下の1人です。

メドーラとグルナーラ姉妹。小林グルナーラが先に登場し、ひとしきり
踊ったとことへ、メドーラ登場です。初メドーラの成田さんは主役に慣れてきたのか
安定感が増したようです。2人が頬を寄せ合ってポーズを取ると、本当に絵になる
美人姉妹、という感じで華やかさがあふれます。美しかったわ・・・。

コンラッドとメドーラが一目で恋に落ちる場面、じっと見つめ合う二人の表情が
アップで映され、こちらもドキドキしました。恥じらってその場を離れる
メドーラ、思わず追ってしまうコンラッド。堀内さんの一途に女性を思う表情って
静かなのにたぎるような情熱が感じられてきゅんとしてしまいます。

そこへ現れる奴隷商人ランケデム。いやー悪そうな石橋ランケデムを待ってました!
鞭をたたき、少女たちを品定めする時のぎらついた目つきといい、メドーラを
見つけて「これは高値で売れるぜ」とニヤリと口元だけで笑う表情といい、今回も
ケレン味たっぷりで、すごくよかった!!

そして奴隷市場。パシャは誰かと思っていたら、ビャンバ・バットボルトさんでした。
トルコ総督ともあろう立場で、美しい少女を買い漁るなんて・・・気持ち悪すぎ。
でもバットボルトさんはきっと素がとてもいい方なんだろうと思います。
その"いい人”な感じが、どう頑張ってもにじみ出てきてしまうパシャでした。

グルナーラとランケデムのグラン・パ・ド・ドゥも安定していてよかったです。
ランケデムはけっこう踊る役なんですよね。踊る石橋さんもたくさん観られて
嬉しかったです。小林さんもさすがのテクニックと美しさで、踊りの素晴らしさを
堪能しました。

映像ではGPDDの最中に、コンラッド一味がお金持ちの1人をさらう場面も
しっかり映していました。お金持ちの身ぐるみをはいで、その服を着たコンラッドが
メドーラ奪還のために少女たちの競売の場に入り込む・・・という設定。
人さらいの場面なんだけど、あまりにもあっけなく「あ~れ~」という感じで
さらわれるマヌケな名無しのお金持ちが可笑しかったです。パシャ以外の
お金持ちは杉野さん、栗山さん、伊坂さんと、もう一人いたかな・・・
さらわれたのは誰だったんだろう?
そうそう、1幕終盤でアリが踊ったり、ランケデムを挑発したりするのですが
ここでの山本アリの雰囲気が熊川アリに似てきたな・・・と思いました。
メドーラを救出したところで1幕は終了。

ライブ配信なので25分の休憩もありました。コーヒーとパイを食べながら
一緒に観ていた夫とここまでの感想を話したり、いつも劇場でしているのと
同じような感じで過ごしましたが、劇場とちがってトイレ待ちの行列に
並ぶ必要がないので、いつもより休憩が長く感じました。

2幕は海賊たちの洞窟。男性ダンサーたちのアンサンブルは迫力があります。
その中の紅一点であるメドーラの美しさと優美さが際たちます。
そしてコンラッド、メドーラ、アリのグラン・パ・ド・トロワへ。
山本さんは、たぶんファイブ・フォーティが若干失敗気味でしたが
他は大技を次々にこなして素晴らしかったです。堀内さん、成田さんも堅調。
楽しんで観ました。

そしてそして・・・コンラッドに失望したビルバントと捕らえられていた
ランケデムの結託。2人とも悪そうな笑顔で握手・・・コワイ。
コンラッドをなきものにしようとする場面では、あの優し気なイケメンの
栗山さんがメドーラを殴って気絶させたのを観て「あぁーっ、栗山さんが
(←海賊ではなく)そんなことしちゃだめー!」と心の中で叫んでしまいました
・・・いろいろな役をやることでダンサーとして成長してもらいたいと
思っているつもりなのですが、思わずこんな反応に。

パシャの屋敷。『生ける花園』のアンサンブルはたおやかで美しかったです。
踊りを見せる場面は、この後あまりないんですよね・・・。
パシャの前に特別美しく飾り立てられているグルナーラが引き出されてきますが、
パシャを拒絶して奴隷として扱われることになります。そこへメドーラを連れた
ランケデムが現れ、期せずして姉妹は再会。自分のことより妹を気遣う
グルナーラにお姉さんらしさを感じました。
そこへ乗り込んでくるコンラッドたち。メドーラを救出して抱き合う2人。
グルナーラも助けられます。(ここ、2017年は実はグルナーラとアリも
愛し合っていた、みたいな演出だったんだけど、今回はナシになったようですね。
あれはあまりにも唐突な展開だったものねぇ・・)
ビルバントも何食わぬ顔で加勢していますが、倒れているランケデムを見つけると
口封じにサクッと殺してしまいます(こわ!)。でもメドーラから
コンラッドを亡きものにしようとした犯人の1人だと指さされると
コンラッドの背中に銃口を向けます。轟く銃声とともに倒れたのは、コンラッドを
かばおうとしたアリ。コンラッドの腕の中で息絶えます。
コンラッドは今度こそビルバントに向けて引き金を引きます。

最終場面。コンラッドとメドーラだけを乗せた船が水面を進みます。
アリがつけていた白い羽を海に流すコンラッド。
これからはメドーラと二人で静かで平和に暮らすことを誓うのでした。
(幕)

何度目かのカーテンコールで、石橋ランケデムと小林グルナーラが
役柄そのままに、追い立てる役、連れていかれる役・・・をやっていて
お茶目でした。
そしてマイクを持った熊川芸術監督も登場。
堀内さんのプリンシパル昇格が告げられました。
堀内さん、おめでとうございます!!
映像だけどリアルタイムで知ることができてよかったです。

映像のいいところは、
-会場まで出かけていく時間と労力が不要になる
(今日のように天気が悪い日はありがたい)
-チケット代が安い
-座席の位置を気にしなくてよい
(前の人の頭とか、ステージまでの距離とか)
-ダンサーの表情や衣装などがよく見える
-(そうしたければ)好きな体勢で観られる
-(そうしたければ)飲み食いしながら観られる
・・・といったところでしょうか。
私は『海賊』の女性ダンサーの衣装が大好きなので、今回映像で観たことで
衣装やアクセサリーの細かい部分までよくわかったのは本当にワクワクしました。
ただ、直接会場で鑑賞する、あの独特の高揚した雰囲気も、やはり捨てがたい
魅力がありますよね。都合によって選び分けるのがいいんだろうなと思っています。

本当に久しぶりの全幕バレエを鑑賞できて感激でした。
美しいものを見ると、なぜこんなにも心満たされるんでしょうね。
ダンサーの皆さん、スタッフの皆さんに心からお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

明日の千秋楽はオーチャードホールに観に行きます。

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(画像をお借りしています)