千秋楽を鑑てきました。祥子さん、遅沢さんの退団公演でもあり、寂しさを覚えつつも
堪能しました。ちなみに・・・プログラムには宮尾さんも退団、と書いてあり・・・
一度に3人ものプリンシパルが退団なんて切なすぎます・・・。

今日はキャスト変更があり、ランケデム役が高橋さんから石橋さんに、グルナーラ役は
結城亜美さんから小林さんに。高橋さんはお怪我ということですが、初お目見えを
楽しみにしていた結城さんの交代については理由わからず。
しかしこのキャスト変更、(高橋さん、結城さんには申し訳ないですが)私には
ベスト・キャスティング、超豪華な顔ぶれでした。

コロナ対策で、チケットの半券は自分でもぎって箱に入れる、とか、連絡先を
登録する、とか、入場も少し時間がかかりました。座席も一つおきに座るシステム。
さらにビュッフェでの飲食物の販売もなし。これまでとは何かと違うやり方でしたが
特に戸惑うこともなく、7か月ぶりに生でバレエを観られる期待感が上回っていました。

冒頭の場面、イケメン揃いなのは今回もですが、久しぶりに宮尾さんのお姿があったり
昨日プリンシパルになったばかりの堀内さんもいて、贅沢さが増した感じ。

遅沢さんのコンラッドは少しニヒルな感じもあり、これが海賊の首領らしくて
素敵でした。

宮尾さんのビルバント役は初めてではないかと思いますが、細かい点でも演技達者な
ところが光りました。黒づくめの衣装のせいか、けっこう悪い奴に見えたし、
これまでずっと"がっちりしすぎ"と思っていたのが細身に見えました(失礼)。

そして待望の祥子さんメドーラの登場。女神のように神々しく見えてしまうのでは、
という心配は杞憂でした。でもやはりとんでもなく美しかったですが・・・。

コンラッドとメドーラが恋に落ちる場面はオペラグラスでガン見してしまいました。
じっと見つめ合ったあと、さり気なさを装って目をそらすメドーラに対し、視線を
彼女からそらせなくなっているコンラッド。ああ、もう・・・胸キュンシーンです。
ここ、大好きな場面です。

石橋ランケデム、今日も悪くてよかった!そうえば今回少しロン毛なんですね。
この役は本当に石橋さんの当たり役だと思います。踊る場面もたくさんあって
石橋ファンにはたまらないです。これからもずっと大事にしてほしい役です。

メドーラたちを奪還することを誓ってコンラッド、アリ、ビルバントが踊る場面。
プリンシパル3人が揃い踏みで、なんて豪華なんだー!と感激しつつ観ました。

奴隷市場の場面は、グルナーラとランケデム、後半にはアリの、踊りの
見せ場でもあります。小林さん、石橋さん、山本さんとも、お疲れも見えず
とてもよかったです。そうそう、小林さんは以前、音楽に合わせて踊るのが苦手、
と何かのインタビューでおっしゃっていましたが、だいぶよくなったと思います。
音楽にピタッとあって動いてくれると、観ているほうもやはり気持ちがいいですね。

今日のお金持ちは、栗山さん、杉野さん、伊坂さん、ランシエさん。たぶん昨日も
同じだったんじゃないかと。そしてさらわれてしまうお金持ちはランシエさんでした。
うーん、たしかにさらわれそうな感じかも・・・強くなさそうだし・・・
(ランシエさんごめんなさい)。

メドーラ(だけ)を奪還して洞窟へと向かっていく場面は幻想的です。
2幕冒頭の海賊たちの踊る場面は力強く迫力があって、ここも大好きです。
音楽もいいんですよね。
『鉄砲の踊り』、音楽や振付が、じつはマズルカみたいですね。そして、宮尾さんが
踊るのって本当にいつぶりだろう?と思いながら観ていました。堅調な踊りで
よかったです。

オダリスク3人のバリエーションは、毛利さん、成田さん、高橋さん。
別の日にメドーラ役だったダンサー2名が踊るバリエーション、なんて贅沢。
高橋さん含め、皆さん素敵でした。

グラン・パ・ド・トロワ。お疲れが出るのでは・・・と、とても心配していましたが
3人とも見事に踊り切ってくれました。素晴らしかった!祥子さん、遅沢さん、
山本さんとも、それぞれに思いを込め合ったようなお辞儀をされていましたね。

奪還した少女たちを家に帰す、と宣言するコンラッドに怒りをぶつけるビルバント。
ここでの小競り合い、昨日より長く、手が込んでいるように感じました。
そして捕らえられていたランケデムと結託・・・宮尾ビルバントは時として手下を
脅しながら、しかし淡々とした表情で悪知恵を決行してコンラッドとメドーラに危害を
加えようとします。宮尾さんの演技がさすがでした。今日の悪い手下は栗山さんと
なんと堀内さん・・・悪い堀内さんも見たくない・・・。

2幕1場で1つ不満があるとすれば、メドーラがグルナーラのことを心配する場面が
ないこと。以前はあったようなのですが。なんだかコンラッドと愛し合って
喜びのあまり、お姉さんが悲惨な状況にあることを忘れちゃったのかな?
と思ってしまいます。
最後にグルナーラが助けられるのも、コンラッドたちの直接の理由は、メドーラの
救出のはずなので、これだとなんだかグルナーラは"ついでに"助けられるみたいで、
私がグルナーラなら、ひがんでしまいそう・・・。なので、メドーラとコンラッドが
グルナーラを思う場面を復活させてほしいのです。

パシャの屋敷で再開するグルナーラとメドーラ。美人姉妹2人を手に入れたぞ!と
喜ぶパシャが気色悪い・・・。グルナーラもメドーラも本気で彼を忌み嫌う表情です。
抱きつかれたら全身で押しのけている(そりゃそうよね)。
そこへコンラッドたちが登場です。大乱闘のどさくさに乗じてランケデムを殺す
ビルバント。無表情なのが怖かった。さらに自分の悪行をメドーラに暴かれると
コンラッドに発砲。コンラッドをかばったアリの死を知って、今度こそビルバントに
銃口を向ける遅沢コンラッドの表情が印象的でした。

最中場面。アリの羽を海に流した後、しっかり抱きうメドーラとコンラッド。
前方へとあげた腕の先にある光が、2人の未来を象徴するかのようでした。
(幕)

カーテンコールは何度あったかな。スタンディングオベーションの観客も
多かったです。祥子さん、遅沢さんは客席に向けてだけでなく、一緒に踊った
ダンサーたちにもお辞儀。いったん公演終了のアナウンスが流れたのですが、
そんなこと誰にも聞こえていないかのように拍手が鳴りやみませんでした。
熊川さんが登場して祥子さんに花束を渡し、耳元で何かを囁き、遅沢さんにも声を
かけていました。最後の最後はスタッフも含めての全員が登場してのカーテンコール。
祥子さんは最後のほうは泣いていらしたみたいで、手で頬を抑えながら
出て来られたりしました。逆に遅沢さんは、珍しく心の底からの笑顔を見せて
下さって。最後なので特別なカーテンコールになるのはわかっていましたが、
やはり胸が一杯になりました。

コロナ対策で、こんな大事な公演でも、ダンサーにお花やプレゼント、お手紙を
渡すことも禁止、出待ちもだめ・・・ということでしたが、終演後も思い断ち切れず
オーチャードホールの周りをだいぶうろついてしまいました。
次の『くるみ割り人形』以降の公演には、祥子さんも遅沢さんももういないんだ、
と思うと、とてもとても寂しいです。祥子さんは私の女神、私のアイドルですし、
遅沢さんはアンケートの"好きなダンサー"に一番長い期間、お名前を
書き続けてきた方なんです。
でも、時は過ぎ去ってゆくもの。
どれほど素晴らしい舞台も、いつかは幕が下ります。
おふたりの決断の上に祝福がありますように。そしてお2人の今後が
佳き日々であることを心からお祈りしています。
きっと、またどこかでお会いできますよね。

海賊